
久しぶりにキャンプをした。我が家は夫婦揃って積極的なアウトドア派でもないし、僕自身は島育ちなのにしっかり泳げないなど、ワイルドさから一切縁遠い。
とは言え、都会よりも木々のそよぐ山の中や、美しい夕焼けに染まる海の方が落ち着くし、文明よりも自然の方が地球にとっては大事だとも思う。
年齢は関係ないかも知れないが、昨年50歳を超えたタイミングで、よく分からないが庭の手入れがしたくなり、人生で初めて作業用にオーバーオールを買った。
そしてきっかけは格好だったが、なんだかんだ土に触れ作業をしているうちに、久々にキャンプをするのも良いなと思うようになり、そんな最中、山梨で知人が管理する広い庭のある古民家に出会った。
山梨は韮崎市にある彼女が管理するその場所は「アヰルナ」と名付けられ、地域の方々や自然に触れ合いたい都心の人たちが集える場としてイベントなどが不定期で開催されていたが、聞いたところ、テントを張って泊まってもいいとのこと。
そんな訳で、暫く使っていないテントを押入れから引っ張り出し、GWに夫婦と犬一匹で、アヰルナにてキャンプをして来た。
このアヰルナのある韮崎市は甲府から長野方面に約15㎞行ったところに位置するが、四方を南アルプス、八ヶ岳、富士山に囲まれる大変風光明媚な場所で、山登りをする人たちの拠点としても知られているようだ。
GWの前半、初夏の日差しを感じさせる晴天のもと、辿りついたアヰルナは力強い新緑で満たされていて、周辺の田んぼではま正に田植えが終わり、綺麗に整列した小さな苗たちが水面に揺れていた。
おそらく7年ぶりのキャンプ。組み立てる手順を思い出すには前回の記憶は朧げで、ほぼ初心者の段取りで作業を進める。この日は全国的にもニュースになる程の強風で途中かなり手こずったが、たまたま居合わせ他の熟練キャンパーの方にも手伝って頂き、しっかりと安定して設置が出来た。
ひとまず基盤が整った後はクルマから荷物をテントに移し、頃合いを見て買出しに行き、焚き火とともにバーベキューと言うキャンプの王道も味わったが、今回のキャンプで僕が感じた一番の醍醐味はこの後にやって来た。
眠る前のひととき、狭い室内で最低限の荷物に囲まれて、小さな灯を頼りに、皆んなで寄り添い眠るのはただシンプルに幸せだと感じた。
そしてそんな僕らを取り囲む様に、近くの田んぼでは沢山のカエルが、まさに懐かしい童謡のタイトルの如く、カエルの歌の大合唱に興じており、BGMとしては穏やかでは無いけれど、賑やかで愉快な時間が漂った。
それ以外にも得体の知れない虫たちのざわめきや、鳥たちのささやきが闇夜を行き交い、何だか異世界に迷い混んでいる気にもなったが、非日常感と日頃の疲れが眠気を誘い、程なく僕は眠りに落ちた。
その後、最初のうちは僕も奥さんも何度か目を覚ましたが、後に深い真夜中の底で身を屈め、次に目覚めたのはテントの向こう側が淡い光を放ち始めたタイミングだった。
登りゆく太陽に歓喜する鳥たち。その鳴き声が大地を震わせて、ああ朝がやって来たんだなと実感する。
そう、これが朝が生まれた瞬間。
結局、僕らはテントで2泊した。2泊目は外食して温泉施設で快適に入浴したから、純粋に言えば1.5泊と訂正するのが正しいかも知れない。ただし2泊目も、静かな家族の時間とテントの外の異世界をしっかり味わった。
帰宅に向けて片付ける際、今回のキャンプで足りなかったものは何かなど、知らず知らず頭の中で振り返っていた。キャンプへの熱はそんなに直ぐには冷めなそうだ。早く次のスケジュールを練りたいとも感じた。
余談ではあるが、僕も奥さんも寝ている間に何度か目を覚ましていて未だ郷に入っていないが、我が家の犬だけは初のテント泊にも関わらず、すっかり寛いで眠っていた。自然へ溶け込む順応性の高さ、地球に生きる存在としては、やはり犬の方が人間よりも高次の様だ。






