
今から3年前の年始に突然シーサーが欲しくなった。その年の1月からかなり心身ともに負荷のかかる部署に異動することが決まっていて、果たしてその状況をどう乗り越えていこうかというタイミングで、お守りの様な存在が身近にあったらと思うようになっていた。
僕が住む鎌倉にはとある素敵な器のギャラリーがあり、全国各地の作家さんの作品が1ヶ月に1回程度入れ替えで展示されるが、ここ数年、年初の1回目は吉岡萬理さんという作家さんの個展が開催されていた。
このギャラリーで展示をされる作家の方々は、シンプルさの中に世界観を凝縮した無地の作品が多い印象だが、吉岡さんに関して言えば、カラフルな絵付け・色使い、そして動物をモチーフにしたオブジェなと、その中にあって異彩を放っていた。
年明け早々、個展初日のオープン時間に合わせギャラリーに向かう。どことなく真新しい空気に包まれた鎌倉の街並。正月の佇まいを纏う商店街を歩くだけで何だか気持ちが良く、自然と足取りも軽くなる。
吉岡さんの個展に行くのは初めてだったが、毎年楽しみにしている常連さんが多いのだろう、店の中は既にたくさんのお客さんで活気に満ちていて、店の外で順番を待つ人たちが、窓越しに今年の新作に眼を凝らしていた。
そんな溢れかえる人の間を縫うように、笑顔で気さくにお客さんたちと話をしている男性が吉岡さんで、見るからに人柄の良さが滲み出ていた。一方で、作風やお名前からすると女性なのかなと思っていたので、正直、少しばかり驚きもした。
暫らく待った後、店内に入り、ギャラリーの告知で目星をつけていたシーサーを見つけた。我々が知っているオーソドックスさとは程遠いフォルムと色使い。沖縄育ちの人ならば腰を抜かして驚くだろう斬新なシーサーに一目惚れして、迷う間も無く2体購入し我が家に連れ帰った。
因みに購入時に吉岡さんと少し話したが、「シーサーなんて自由でいいんですよ」と笑っておっしゃっていて、その清々しさに触れ、僕の身体と心がふと緩んだ気がした。
帰宅して早速奥さんにも披露した。2体も買ってきたのが意外と漏らしつつも、手に取り愛着をもった眼差しで隅々まで眺めていたが、少し前に虹の橋を渡った2匹の愛犬にその姿を重ねている様にも見えた。
縁起も良さそうだし、色々な人に見てもらいたいと思い、玄関扉を開けた棚の上に2匹のシーサーを置いてみた。予想通り、我が家に来客がある時は、皆そのカラフルな姿と光を放つような存在感に目を奪われ、誰もが自然と笑顔に満ちた。
その後、我が家は無病息災で、夫婦共々色々なチャレンジもしつつ、1年を楽しく過ごすことが出来た。また良いご縁があり、保護犬サイトで見つけた1匹を新たに家族に迎えることも出来た。
我が家にやってきた2匹のシーサー。僕らだけでなく、多くの人たちに笑顔とエネルギー、幸福感を与えてくれる吉岡さんの作品には未知の力が宿っているようだ。そしてアートとは日常に彩りと息吹を与え、毎日を物語にする、ちょっとした魔法の様な存在なんだと気付かせてくれる。
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